第6章 人骨について
第3節 分析結果
(1)1号墓(成人男性2体、成人女性2体、性別不明成人9体、幼児3体)
出土した蔵骨器の身のうちで、9点から人骨が出土しているが、いずれの蔵骨器内にもニービの砂粒 が流入しており、人骨の残存状況はあまり良くないか、非常に悪い状態であった。
○蔵骨器1(性別不明成人2体、幼児1体)
骨の保存状況は悪く、残存する骨も少ない。成人骨は頭蓋骨破片、遊離歯、大腿骨片などが出土して いるが、年齢・性別などの詳細は不明である。歯が2体分確認されている。幼児骨については、出土し たのは遊離歯のみである。
○蔵骨器2(成人男性1体、性別不明成人2体、幼児1体)
保存状況があまり良くないが、男性1体分の全身骨が確認された。出土した成人骨は1体分だが、歯 が3体分出土している。歯にはエナメル質減形成がみられる個体があるが、成人男性と同一個体かは不 明である。幼児骨については遊離歯のみの出土で詳細は不明である。
○蔵骨器3(性別不明成人1体)
骨の保存状況は悪く、残存する骨も少ない。年齢・性別などの詳細は不明である。
○蔵骨器4(性別不明成人1体)
残存状況が非常に悪く、出土した人骨は不明四肢骨片、その他破片である。年齢・性別などの詳細は 不明である。
○蔵骨器6(成人男性1体)
残存状況はあまり良くないが、四肢骨骨端サイズより男性と推定した。頭蓋骨や歯などが出土してお らず、詳細は不明である。
○蔵骨器8(性別不明成人1体)
保存状況が悪く、年齢・性別などの詳細は不明である。
○蔵骨器10(性別不明成人2体、幼児1体)
保存状況は悪く、人骨の出土数も少ない。四肢骨は1体分だが、遊離歯では2体分確認された。幼児 骨は頭蓋骨、四肢骨などが出土しており、歯の萌出状況から年齢を推定した。
○蔵骨器12(成人女性1体)
残存状況が悪く、四肢骨サイズより成人女性と推定した。年齢などの詳細は不明である。
○蔵骨器13(成人女性1体)
残存状況が悪く、四肢骨サイズより成人女性と推定した。年齢などの詳細は不明である。
(2)2号墓(成人男性2体、乳児1体、幼児2体)
2号墓の墓室内は蔵骨器の破片が多量に堆積しており、その中に人骨が混在して出土した。床面全体 に散乱して、堆積していることから、どのような経緯で埋没したものかは定かではないが、元来は人骨 が納められた蔵骨器であったのではないかと推測される。そのため2号墓出土の人骨は一括して取り 扱った。
成人骨は左上腕骨と右距骨が2体分出土したことから、最小個体数で2体と推定した。腰椎に変形性 脊椎症がみられ、また、下顎犬歯にはエナメル質減形成が認められた。個体識別が困難なため、どの個 体のものかは不明である。
幼児骨については、1体分のみの出土であったため、頭蓋骨、下顎骨、四肢骨などのサイズにより同 一個体と推定した。
(3)3号墓(成人男性1体、幼児~小児1体)
全体に残存状況は悪いものの、四肢骨と遊離歯が同定された。四肢骨は成人である一方、遊離歯は未 萌出とみられることから、成人と未成人が各1体ずつ含まれることが窺われた。
(4)4号墓(成人男性3体、成人女性1体)
○蔵骨器1(成人男性1体)
四肢骨を中心に比較的多くの部位が同定されたものの、形態が完存する資料は指骨など一部の部位の みで、詳細な観察は難しいが、四肢骨などのサイズから男性と推定した。
○蔵骨器2(成人男性1体・成人女性1体)
残存状態は非常に悪く、同定できた部位は大腿骨と中手骨・中足骨の一部と遊離歯のみである。ただ し、大腿骨に重複が見られたことから、2体分が納められたことを窺うことができ、サイズから男女各 1体ずつであると推測される。
○蔵骨器3(成人男性1体)
残存状況は悪く、上腕骨と大腿骨及び遊離歯と脛骨?を同定し、サイズから男性と推測した。
(5)5号墓(成人男性2体、成人女性1体、乳児1体、幼児1体)
墓室内から出土した4点の蔵骨器内からそれぞれ人骨が出土した。5号墓の墓室は埋没していなかっ たことから、比較的多くの事項が観察できた。
○蔵骨器1(乳児1体)
小型のマンガン釉甕形蔵骨器から出土した人骨で、頭蓋・椎骨・四肢骨などの主要な部位を同定する ことができた。いずれも未発達の未成人骨であることが窺われ、下顎骨にはi₂・c及び未萌出のm₂が 残存していることから、乳児段階と推定できる。
○蔵骨器2(成人男性1体・成人女性1体)
完存する資料は無いものの、頭蓋骨の一部および大腿骨などの四肢骨が同定され、部位重複から成人 2体分が含まれていることが窺われた。頭蓋骨の眉弓・外後頭隆起及び四肢骨のサイズからそれぞれ男 性と女性であると推測される
○蔵骨器3(成人男性1体)
側頭骨・上顎骨・下顎骨・上腕骨・大腿骨・脛骨・腓骨が同定され、四肢骨のサイズから男性と推測 される。
左の下顎歯に異常萌出が認められ、M₃がM₁とM₂の間に存在している。また、同じく左のM₂には咬 頭の数が多く認められる。また上下のCおよび下顎のI₂・P₁にエナメル質減形成が観察される。
○蔵骨器4(幼児1体)
蔵骨器1と同様、小型のマンガン釉甕形蔵骨器から出土した人骨で、頭蓋骨・椎骨および主要な四肢 骨が同定され、発達形状から未成人骨であると判断される。上下の顎骨にはm₁が残存歯、下顎のm₂が 未萌出である様子を窺うことができることから幼児段階と考えられる。
(6)19号墓(成人男性1体)
全体的な残存状況はそれほど良くないものの、頭蓋骨破片や手根骨・足根骨などが同定され、やや不 明瞭であるものの、外後頭隆起の発達状況から男性と推測される。また、遊離歯は全体的に咬合面に咬
耗を呈し、特に左右のP¹には強い。また上顎CおよびI²にはエナメル質減形成が観察される。
(7)24号墓(成人男性1体、年齢性別不明3体)
墓室から5点の蔵骨器が原位置で残存しており、蔵骨器2を除く4点に人骨が残存していた。しかし ながら、蔵骨器3・4・5から出土した人骨の保存状況は不良で、その大半が破片であることから、年 齢性別等の詳細が不明である。
○蔵骨器1(成人男性1体)
手根骨や足根骨・中手骨・中足骨などが比較的形態を残存して出土しており、四肢骨も骨端などが部 分的に同定され、四肢骨等のサイズから男性であると推測される。足の第1基節骨の近位端の関節面に 骨増殖が認められ、炎症痕と考えられる。
(8)25号墓(幼児2体)
小規模な墓遺構で、墓室から小型の有頸甕形蔵骨器が1点出土しており、複数体分の未成人骨が確認 された。同定された部位は、頭蓋骨破片・下顎骨破片・上腕骨・大腿骨及び遊離歯で、遊離歯に重複が 認められる。重複しているのは未萌出のM¹及びM₁であることから、本蔵骨器に含まれる人骨は幼児2 体分であることを窺うことができる。
(9)31号墓(若年1体、幼児1体)
小規模な墓室からボージャー形蔵骨器が3点出土しておりそのいずれからも人骨が出土している。
○蔵骨器1(若年1体、幼児1体)
未成人のものとみられる頭蓋骨・椎骨・四肢骨などが同定され、発達段階の違いによるものとみられ るサイズや形状の違いが認められることから、異なる年齢段階の未成人2体分が含まれることが窺わ れ、より年齢の高いほうを№1、低いほうを№2として個体識別した。№1は、遊離歯がいずれも永久 歯であるが、萌出状況から若年段階程度であろうと推測される。また、下顎犬歯にエナメル質減形成が 認められたほか、四肢骨には重度と軽度の骨膜炎の痕跡が観察される。№2は下顎骨の形成状況、遊離 歯がいずれも乳歯であることなどを踏まえると月齢が18月程度の幼児段階であろうと推測される。
(10)32号墓(成人男性1体、性別不明成人3体)
3点のマンガン釉甕形蔵骨器が出土し、いずれからも人骨の残存が確認された。しかし、蓋が身に乗 せられていたものの、身の内部にはニービの砂粒が充満していた。そのためか、人骨の残存状況は悪 く、蔵骨器2及び3は遊離歯と一部の部位がかろうじて残存する状態である。蔵骨器1は下肢骨を中心 に断片的に残存しており、左の脛骨遠位端が重複することから少なくとも成人2体分が含まれることが 窺える。更に四肢骨のサイズなどから、1体は男性であると推定される。また、いずれの個体に属する か不明であるが、膝蓋骨には軽度の炎症痕が認められる。
(11)34号墓(成人男性1体、成人女性1体、小児1体)
墓室から出土した2点の蔵骨器に人骨が残存しており、両資料とも同定・観察が可能である。
○蔵骨器1(成人女性1体、幼児1体)
成人の全身骨と未成人のものとみられる遊離歯が同定され、成人を№1、未成人を№2として個体を 識別した。№1は頭蓋骨・椎骨・上肢骨・下肢骨と概ね全身の部位が同定され、側頭骨の乳様突起ある